野洲市視察レポート

今回の視察は、多重債務相談の取り組みについて消費生活相談室の主査生水裕美さんからお話を伺いました。

野洲市
滋賀県の中央部、琵琶湖の東側に位置
人口:約50,500人
「人権尊重のまち宣言」をかかげ、今年度から内閣府のモデル事業として仕事・生活・借金などに悩む相談者に寄り添いながら対応していく、パーソナルサポートサービス事業を実施している。

生水裕美さん

野洲市市民部市民生活相談室所属。
消費生活や多重債務者の相談・問題解決に向けて奮闘中。
いつも相談対応を通して、その問題の根本がどこにあるのかを模索している。
社会保障改革に関する集中検討会議のメンバー。

写真左から、石毛・生水裕美さん・常松市議・小林市議・滝口市議

〈生水〉:家も仕事も、今食べるものもない、こういう貧困状態の方の相談が増えていることもあり、これまでの消費生活相談では対応しきれない部分がありましたので、今年の4月からパーソナルサポートサービスという事業を始めました。
窓口を一本化しているので、どんな状況になっても情報を共有できるということで最後まで支援して
いけます。
また、いろいろな行政サービスがありますが、『パラパラになっている支援を一つに繋ぎ合わせて
いくれという概念で取り組んでいます。
22年度は119人の相談者がいて、多重債務によって取り戻した金額は、過払い金4200万円。
うち納税に回してもらったのが342万円です。
小平市の人口は野洲市の約4倍なので、単純に考えても多重債務に悩む市民は約480人、過払い金
にして考えると1億6000万円以上になると考えられます。
過払い金の取り戻しが出来なければ、生活保護の給付になるところが、回収した分で生活していけま
すし、子供のランドセルを買うなど消費にもまわり経済の活性化にも有益な取り組みだと思います。
これまで相談業務というのは全国的に軽んじられてきました。でも本当に必要な人に必要な社会保障
サービスを提供するには、一番初めに対応する職員がしっかり相談業務というものを担うことによって、その人に本当に必要なサービスは何かということを判断する、非常に重要な部分だろうと思うのです。

〈フォーラム〉:他部署と連携してやっていこうというのはどこから出た発想ですか。

〈生水〉:自分の部署だけでやっていたら解決しないという閉塞感を感じてしまう。
でも他の部署と連携すれば解決するアイテムが増えることを理解していく。連携すればするほど仕事
が楽になります。連携すると仕事が増えて大変じゃないかなと思われますが、全く反対です。

〈フォーラム〉:小平市は、多重債務について関係する各課で協議の場をもうけて情報共有することになりましたが、『滞納がある市民に借金のことについては、なかなか聞きにくい』、という意見がありました。
そのようなことについてはどのような形で解決して行けると思いますか。

〈生水〉:それは職員の研修だと思います。研修と事例の積み重ね。相談者にrほかに借金はありますか』と聞くことが、第一歩で、一番難しいことです。
『なぜ税金が払えないのですか』というのは、プライバシーの侵害ではなく、しっかり現状と理由を
聞くというのが正当なやり方なんです。
多くの自治体の方から個人情報の問題があるから、なかなか他の部署との情報共有ができないという声を聞きますが、総務省がr税等の滞納情報をもとに各課で連携して生活再建をしていきましょうれと
いう内容の通達を出しました。
これにより、個人情報の取り扱いに留意すれば役所内で連携していくには問題がなくなります。

〈フォーラム〉:滋賀県が全国で2番目にフリーローンの対策会議をやったということですが、県と市の連携や役割についてはどのように考えていますか。

〈生水〉:直接相談は県の役割ではなくて、県は自治体が動きやすいようにサポートしていくというのが一番の大きな役割であると思っています。
税情報とか直接的な社会保障を提供するのは基礎自治体なので、ここでないと多重債務の取り組みは
できないです。相談の研修会とかは県がやっていけばいいと思いますね。

〈フォーラム〉:野洲市に多重債務者が多いということは無いですか。

〈生水〉:それはないと思います。この前は税の滞納額が20万円ある方から多重債務が見つかって、結局420万円の過払いが見つかりました。
この他にも、ほり起こして80o万円戻ってきた生活保護者の方がいました。滞納している税金も、市営住宅の家賃も水道も全部取り戻した過払い金で払いました。

〈フォーラム〉:各課で情報を共有したことで、デメリットは有りましたか。

〈生水〉:デメリットはないですけれど、逆にメリットとして給食費を滞納されている方の情報を共有することで、家庭虐待に気づき、家庭の中の生活再建、借金整理をすることができました。生活を立て直すことで虐待リスクも下がります。
払える状態ではない人に滞納した税金等を、市が『払え、払え』と言うのは、不親切で不作為なことになると思います。
『どうして払えないのですか』『もしかしたら借金とかお困りのことがないですか』と理由を聞くだけなんです。その方の生活再建をすることで長期にわたる福祉費用の抑制につながるということや、
自殺、犯罪を防ぎましようということが一番だと思います。
何かあればだれもが手を差し伸べてくれる街というのはいいでしょ。

〈フォーラム〉:長時間ありがとうございました。

今回の視察を終えて野洲市では、相談者の約8割が年収300万円以下の低所得者であり、多重債務問題は貧困と密接に絡んでいるようです。
市民の生活再建を支援してくため、どのようにr貧困』と向き合っていくのか。
市は縦割りの考え方から抜け出し、相談体制を整備していくことが必要だと感じました。
先進的な事例を視察して、更にこの間題に取り組んでいくことを強く決意しました。